犬に学ぶセカンドキャリア哲学⑤がんばり屋のあなたへ。過去と未来の重荷を手放し、小さく軽やかに始める再挑戦のヒント

犬に学ぶ
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美容業界セカンドキャリア研究所

研究員で元エステティシャンのyonan

(https://www.instagram.com/salon_secondcareer)です。

夕暮れ時のドッグラン。 足元で元気にボールを追いかけていた愛犬が、ふと立ち止まり、風の匂いをクンクンと嗅ぎ分けた後、何の迷いもなくその場にストンとお座りをする。そして、心地よさそうに目を細めて夕日を浴びる。

美容の現場を退いた私は、サロンの予約表やスマホに鳴り止まない通知、人間関係の気疲れに頭を支配されていたころを思い出し、胸の奥でハッとさせられる瞬間があります。 「愛犬は、過去の後悔にも囚われず、まだ見ぬ未来の不安にも怯えず、ただ『今この瞬間』を完全に生きている」

私たちは、年齢を重ねるごとに「もう40代だから」「今さら新しい挑戦をして失敗したらどうしよう」「世間からどう見られるだろう」と、見えない世間の目を気にして身動きが取れなくなっていきます。結婚、出産、親の介護、そしてサロンの経営やキャリアの曲がり角。人生の後半戦に差し掛かり、「自分の人生、これでよかったのだろうか」と立ち止まってしまう夜もあるでしょう。

そんなとき、私たちに最高の「生き方のヒント」を教えてくれるのは、本棚に並ぶ小難しいビジネス書でも、SNSのインフルエンサーの言葉でもありません。 毎日のように私たちがリードを握り、共に散歩をし、ドッグランの芝生を駆け回る「愛犬たちの姿」そのものです。

この記事では、元エステティシャンとして現場を駆け抜け、現在は働き方やセカンドキャリアの研究をしている私が、愛犬を連れて通うドッグランで他の犬や飼い主たちから学んだ「人生の後半戦を軽やかに、自分らしく生き抜くためのセカンドキャリア哲学」を、エピソードとともにお届けします。

この記事でわかること

  • 犬たちが教えてくれる「過去と未来を手放し、今を生きる」シンプルな思考法
  • ドッグランの多様な犬種・性格から学ぶ「自分の強みの活かし方とありのままの受容」
  • 他の飼い主との対話から気づかされた「大人の女性が無理なく持続可能な生き方を築くヒント」
  • 年齢やブランクを武器に変え、自分のペースで歩み出すための実践的なマインドセット

ドッグランという「小さな社会」で気づかされたこと

私が愛犬を連れて毎週末のように通うのは、風通しの良いドッグランです。そこにはトイプードルや柴犬などさまざまな犬種と、それぞれの事情を抱えた飼い主たちが集まります。

最初は、「うちの子が他の犬と上手に挨拶できるだろうか」「トラブルを起こしたらどうしよう」と、私自身がどこか緊張し、まわりの目を気にしていました。 しかし、何度も通ううちに、ドッグランという空間が、人間の世界にあるような「見栄」や「損得勘定」「他者との比較」が一切存在しない、極めて純度の高いフラットな社会であることに気づかされたのです。

動物行動学やペットの心理学に関する研究(例えば、アニマル・アシステッド・セラピー等の文脈でも語られるように)において、犬は人間の感情や心理状態を鏡のように映し出す存在であると言われています。 私たちが仕事のストレスや将来への不安を抱えてピリピリしていると、犬たちもそれを敏感に察知して落ち着きをなくします。逆に、私たちが肩の力を抜き、目の前の愛犬の温もりに集中しているとき、犬たちも心からリラックスしてその空間を楽しんでいます。

「あれ、私はいつの間にか、他人の目を気にして自分の人生のリードをきつく引きすぎていたのではないか?」 ドッグランのベンチに座り、楽しそうに走り回る犬たちを眺めながら、私は自分の凝り固まった思考の枠組みにハッとさせられたのです。

「今、この瞬間」に100%のエネルギーを注ぐ

ドッグランで他の犬たちを観察していて最も驚かされるのは、彼らの「切り替えの早さ」です。

ある日、元気いっぱいの柴犬が、別の犬とのおもちゃの取り合いでちょっとした小競り合いになりました。飼い主同士が慌てて止めに入り、その場はすぐに収まったのですが、人間なら「さっきの子に嫌な顔をされたな」「うちの子、嫌われていないだろうか」と、その後何時間も、あるいは何日も引きずってしまうような場面です。 しかし、その柴犬は、数秒後にはケロッとした顔で別の草花の匂いを嗅ぎ始め、まるでさっきの出来事など宇宙の記憶の彼方に消え去ったかのように、今目の前にあるボール遊びに全集中していました。

私たちがサロンや仕事でやってしまっている失敗

私たち人間は、どうでしょうか。

  • 「あのとき、お客様にあんな言い方をしてしまったのではないか…」
  • 「若い頃はあんなに上手に施術できたのに、最近の技術についていけない…」
  • 「もし次の挑戦に失敗したら、周りになんと言われるだろうか…」

過去の失敗という「終わった過去」と、まだ起きてもいないトラブルという「見えない未来」の二つの重荷を同時に背負い込み、今この瞬間のエネルギーをすり減らしていませんか。

キャリアコンサルタントの学びや心理学の領域でも、マインドフルネス(今、この瞬間に意識を向けること)の重要性が繰り返し説かれています。 犬たちは言葉を持たない代わりに、「過去の後悔に縛られず、未来の不安を先取りせず、ただ今目の前にあることに全力を注ぐ」という生き方を、全身全霊で体現してくれています。

セカンドキャリアを築くときも同じです。「あの時ああしていれば」という過去の遠回りを悔やむのではなく、「じゃあ、今日のこの1時間で、自分のために何ができるだろう?」という現在の視点に立ち返ること。それが、ブレない心を作る哲学です。

ドッグランの先輩犬から学ぶ:「自分の個性を無理に変えようとしない」

ドッグランには、本当に様々な性格の犬がいます。

  • 誰とでもすぐに打ち解けて、真っ先にしっぽを振って近づいていく社交的な「ムードメーカー型」の犬。
  • 大勢の輪の中には入らず、隅っこの方でマイペースに草を嗅いだり、飼い主の足元にピタリと寄り添って安心感を味わう「マイペース・職人型」の犬。
  • 足が少し悪かったり、高齢で走るスピードは遅くても、そこにいるだけで圧倒的な包容力と安心感を放つ「ベテラン長老型」の犬。

面白いことに、マイペース型の犬を無理やり大勢の輪の中に放り込もうとすると、その子は激しくストレスを感じて震えだします。逆に、社交的な子をずっとケージに閉じ込めておいたら、エネルギーが有り余って問題行動を起こしてしまいます。 犬たちは、誰も「他の犬のようになろう」などとは微塵も考えていません。自分の気質や体力、その日のコンディションを完璧に理解し、それに合った過ごし方を自ら選んでいます。

「若い頃の自分」という呪縛を捨て、大人の気質を活かす

これは、私たちが歩むセカンドキャリアや働き方にもそのまま当てはまります。

かつて20代や30代の黄金期だった頃、私たちは「誰よりも素早く動き、流行の最先端を追いかけ、大勢のお客様をテキパキと回すこと」が優秀なサロンスタッフの基準だと信じ込まされてきました。 その結果、40代・50代になり、体力が落ちたり、家庭との両立で思うように時間が取れなくなったりしたときに、「昔の自分のようにバリバリ動けない私はダメだ」と、自分の本質を否定してしまうのです。

しかし、ドッグランの「マイペースな職人型」や「包容力のあるベテラン長老型」の犬たちを見てください。彼らは無理に若い犬たちのように走り回ったりしません。その代わりに、落ち着いた佇まいで周囲を癒やし、確かな存在感を放っています。

私たち大人世代が目指すべきセカンドキャリアも同じです。 大勢の顧客を低価格で回す「若手・体力勝負のスタイル」ではなく、一人ひとりのお客様と深く向き合い、圧倒的な安心感と丁寧なカウンセリングを提供する「大人の職人スタイル」へとシフトすること。自分の現在の気質と体力に逆らわず、その個性を最大限に活かすことこそが、最も持続可能で美しい生存戦略なのです。

他の飼い主との対話から気づかされた「小さく、しなやかな生き方」

ドッグランのベンチは、犬同士だけでなく、そこで出会う飼い主たちの「大人の社交場」でもあります。ある夕方、そこで出会ったある50代の女性(コーギーを飼っている先輩オーナー)との会話が、私の人生観を大きく変えてくれました。

彼女はかつて大手企業の営業職として心身をすり減らすように働き、40代半ばで大きな体調不良を経験したといいます。そのとき、仕事を手放してゼロから暮らしを見直し、現在は自宅の一角で小さなお菓子教室を開きながら、愛犬と過ごすゆとりある時間を最優先にした生活を送っていました。

彼女が言った言葉が、今でも忘れられません。

「人間ってね、会社や組織という大きな看板を背負っているときは、『自分にはこれしかない』って思い込んでしまうものなのよ。でも、いざその看板を下ろしてみたら、自分が本当に大切にしたいもの、例えば、愛犬と散歩する夕方のこの穏やかな時間とか誰かの美味しいという笑顔とか、そういう小さな手触りのある暮らしこそが、本当の豊かさだったんだって気づいたの。大きく稼ぐ必要なんてなくて、自分の心と体がすり減らないサイズで、誰かに喜ばれる小さなお店を回していく方が、よっぽど心が豊かですよ」

この言葉は、美容業界の第一線で「もっと売上を上げなければ」「もっと上にいかなければ」とアクセルを踏み続けてきた私の心に、スッと温かい風を通してくれるようでした。

厚生労働省の労働市場や働き方に関する調査などでも、現代のミドルシニア層において「企業の規模や賃金の高さ」よりも「ワークライフバランスの維持」や「やりがい・自己実現」を重視する傾向が強まっていることが示されています。

私たちはつい、「店舗を大きくしなければ」「スタッフを何人も雇わなければ成功ではない」という古い呪縛に囚われがちです。しかし、愛犬との暮らしを愛し、自分の手の届く範囲で小さなビジネス(マイクロ経営)を営む先輩たちの姿は、私たちが目指すべき「しなやかなセカンドキャリアの形」を非常に具体的に教えてくれました。

愛犬の死と向き合う中で学んだ「キャリアの終わりと新しい始まり」

少し切ない話になりますが、私の周りの愛犬家仲間や、私自身が過去に経験した愛犬との別れからも、セカンドキャリアに通じる深い学びを得ました。

犬の寿命は、人間よりもはるかに短いです。いつか必ず、愛犬との別れの日はやってきます。 「あんなに元気に走り回っていた場所なのに、もうこの子はいない…」という喪失感やペットロスに直面したとき、人は深い悲しみの中で立ち止まります。しかし、不思議なことに、愛犬との別れを経験した飼い主の多くが、その悲しみを乗り越えた後に、「これからの自分の残された人生を、本当に自分が愛せることだけに注ぎ込もう」と、新しい一歩を踏み出す勇気を得ています。

キャリアの現場でも同じことが言えます。 美容業界で長く働いてきた人なら誰しも、「長年愛用したサロンの閉業」「突然の体調不良による現場からの離脱」「人間関係やライフスタイルの変化による大きな挫折」など、いわゆる「キャリアの小さな死(終わりの喪失感)」を経験したことがあるはずです。

「これまでの私のキャリアは終わってしまったんだ」と絶望し、そこで立ち止まってしまうのか。 それとも、その終わりを一つの区切りとして受け入れ、「じゃあ、この経験を糧にして、次はどんな新しい物語を始めようか」と、新しい命の芽吹きのように再挑戦の扉を開くのか。

犬たちは、どんなに悲しい別れや試練を経験しても、また新しい出会いを受け入れ、今を生きる強さを持っています。私たちの人生もまた、何度でも新しく書き換えることができるのです。

【実践】今日からできる「犬に学ぶセカンドキャリアの3つの習慣」

ドッグランの犬や飼い主たちから学んだ知恵を、明日からの私たちの生活やセカンドキャリアの構築にどう活かしていけばよいでしょうか。具体的な3つの習慣に落とし込んでご紹介します。

習慣①:「今、目の前の一歩」だけに集中する(過去と未来の重荷を下ろす)

「来年どうなっているだろう」「ブランクが長すぎて通用するかな」という未来の不安が頭をもたげたら、愛犬がボールを追うように、「今日、この1時間でできる具体的な小さなアクション」(例:ノートを開いて自分の想いを10行書く、気になる関連記事を1本読む)だけに意識を集中させましょう。

習慣②:自分の気質に合わない「無理な競争」を降りる

他人と比較して「もっと頑張らなければ」と焦るのをやめましょう。あなたの現在の体力、ライフスタイル、そしてこれまでの人生経験(マイペースさや包容力)に最も適した、小さくて温かい働き方(マイクロ経営や在宅ワーク、時短の専門サロンなど)を選び取る勇気を持ちましょう。

習慣③:自然や日常の小さな手触りを楽しむ時間を最優先にする

パソコンの画面やサロンの予約表ばかりを見つめていると、視野が極端に狭くなります。休日は愛犬と一緒に近所の公園や海辺を散歩し、風の匂いや季節の移ろいを感じる時間を取り戻してください。その「心身の余白」こそが、新しいアイデアとエネルギーの源泉になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. ペットを飼っていなくても、ここで語られているような「生き方のヒント」は得られますか?

A. はい、もちろん得られます。 動物と暮らしていなくても、自然のなかの動物たちの姿を観察したり、植物が季節ごとに余分な葉を落として新しい芽を出す自然の摂理に触れたりすることで、人間社会の複雑な損得勘定から離れた「シンプルに生きる視点」を取り戻すことは十分に可能です。

Q2. 40代・50代から全く新しいセカンドキャリアを始めるのは、やはりリスクが大きすぎませんか?

A. 大きなリスクを取る必要はありません。 犬たちが環境の変化をしなやかに受け入れるように、私たちのセカンドキャリアも「いきなり会社を辞めて全財産を投資する」ようなギャンブルである必要はありません。まずは夏の長期休暇や休日のスキマ時間を活用し、小さく副業や情報発信を始める「スモールスタート」を徹底すれば、リスクは最小限に抑えられます。

Q3. 「今の働き方に疲れたけれど、何から始めていいかわからない」という場合はどうすればいいですか?

A. まずは自分の「現在地」と「手放したいもの」を書き出すことから始めましょう。 犬が不要になった力を抜くように、まずは「私が本当にやりたくないこと(無理な連勤、低価格競争など)」と「これだけは大切にしたいこと」を紙に書き出し、日々のルーティンから無駄な負荷をそぎ落とすことがすべての第一歩になります。

結びに|あなたの人生のリードは、あなた自身が握っている

ドッグランのフェンスの向こう側には、いつでも広々とした空が広がっています。 リードをふと緩めたとき、愛犬は自由な足取りで風に向かって走り出します。その姿を見ていると、「人生は、私たちが思っているよりもずっとシンプルで、自由なものなんだ」という当たり前の真実に気づかされます。

「もう年齢だから」 「美容の仕事しかしてこなかったから」 「一度現場を離れたブランクがあるから」

そんな風に、自分で自分の首にきついリードを巻きつけ、身動きが取れなくなっていませんか? そのリードをそっと外し、自分の足で、自分のペースで、心地よい風の吹く方へ歩き出すことは、いつからでも、何歳からでも始められます。

あなたがこれまで培ってきたプロとしての誇りも、人生の酸いも甘いも経験したからこその深みも、すべてはこれからのセカンドキャリアを豊かに彩る最高の財産です。 愛犬が教えてくれた「今を生きる強さ」と「しなやかな自然体」を胸に、あなた自身の人生のリードを自分の手でしっかりと握り直し、新しい一歩を踏み出してみませんか?

今日という穏やかな一日が、あなたのセカンドキャリアの扉を開く、温かな始まりのページになりますように。

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